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薮原検校/シアターコクーン [オペラ・バレエ・舞台]

薮原検校
2007/5/8~5/31 Bunkamuraシアターコクーン
作 いのうえひさし
演出 蜷川幸雄
音楽 宇崎竜童
ギター奏者 赤崎郁洋
*******************************************

5/19(土) 13:00開演 満席。立ち見も。

<ネタバレあります>

開演、真っ暗な中キーンという高音。赤崎郁洋さんによるギター演奏が始まる。一瞬、三味線?と思うような部分もあり引き込まれる演奏ですばらしかった。続いて壤晴彦さんの語りが始まる。ギターの赤崎さんはその後もずっと舞台にいて数本のギターを使い分けながら演奏を入れてくれる。語り手役の盲太夫という設定の壤晴彦さんは淡々とものすごい量の語りをこなしていく。「東北に多いきんぎょ池・・・」という説明で始まる物語は壮絶なラストへ向かってすすんでいく。

使い古された戸板に囲まれた立方形の空間。天井は高い、垂れ下がるひもと梁。床面には複数のロープを張って空間を区切る。ロープは黒子さんと出演者が総出で動かしていた。壁際に鍋釜ら生活調度。中央奥に松の木。章のタイトルと歌の歌詞を左右のモニターに表示してくれる。

フォーク調というか「みんなの歌」にありそうな明るくポップなメロディラインに乗って出演者が合唱する薮原検校のテーマソングは音として聴いているとさらっと流れてしまうのだが歌詞はすごくヘビー。(他の歌も歌詞は相当キツイものがあった)覚えやすいメロディが耳に残っていつまでも頭から離れない。
♪白目むきむき杖ついて 向こう通るは藪原検校
♪主殺し 見殺し 人殺し 年増殺しにかかぁ殺し
♪娘殺しに姫殺し ごろごろごろつき 殺し屋!

途中ところどころで歌が入るのですが皆さんものすごく美声。段田安則さんが歌うというのはイメージじゃなかったのですがお上手なんですね。そして六平直政さん!大変いい声。
古田新太さんの薮原検校は人殺しもするし盗みもするし悪人なんだけどどこか憎みきれない。凄みを効かせる演技のところととぼけた表情で緩急をつけて楽しませてくれた。塩釜座頭の一座で披露する「早話」は圧巻。顔に大汗をかきながら台本12Pにも及ぶと言う長台詞を一気に聞かせる。白餅と黒餅の戦い話なんだけどかなりのスピードで話していくので聞くのもけっこう大変。ごろ合わせな登場人物の名前を聞くのに必死になってしまった。
田中裕子さんのお市が杉の市との絡みシーンはかなり露骨な演出。声の艶っぽさがすごかったです。師匠殺しの返り討ちに合って死んだはずなのに生きていたり、杉の市に川に落とされても生きていたり、不死身っぽい役。お市を殺すことで杉の市=薮原検校の悪行がばれて最後の処刑につながるのだが、いろいろ罪を重ねてきたのに往来で最後の人殺しをしてしまうなんて。
出演者の方はそれぞれがいくつもの役を劇中で演じ分けていて本当に芸達者。

ラストシーンの処刑、上から下がっていたのは人形なんですがものすご~くよくできていて古田さんそっくり!一瞬ビビりました。

<ストーリー>18世紀半ば。今から二百年ほど遡る江戸中期の享保、塩釜。小悪党の魚売り七兵衛は、醜女だが気立てのよいお志保を嫁にもらう、その女房のお産の金欲しさに行きずりの座頭を殺害、金を奪った。そうして生まれてきた男の子は盲だったのだ。めぐる因果の恐ろしさに、七兵衛は自害。生まれた子は座頭になるしか生きていく道はないと塩釜座頭・琴の市に預けられ、杉の市という名をもらう。手癖が悪く手が早い杉の市は、師匠の女房のお市にまで手を出す始末。座頭の修行を続けるある日、難癖をつけて金を巻き上げようとする佐久間検校と言い争ううち、検校の結解を刺してしまう。別れを告げに寄った母の家で、誤って母を殺し、江戸へ駆け落ちしようとお市と共謀して師匠琴の市を殺すが、お市は瀕死の琴の市の返り討ちにあう。
一人になった杉の市は師匠から盗んだ金を携えて江戸に向かい、門下生になるために学者・塙保己市の元を訪れる。晴眼者以上に品性を磨くことを目指す塙保己市が、万事が金と考える杉の市を弟子にするわけもない。
藪原検校に弟子入りし、貸し金の取立てで見る間に頭角をあらわす杉の市の前にお市が現れる。ジャマなお市を川へ突き落とし、そして二度目の主殺しをし、念願だった二代目藪原検校の襲名披露の日、彼の前に立ちふさがるのは殺したはずのお市だった。

キャスト
古田新太 杉の市、(酉の市)後の二代目藪原検校
田中裕子 お市
壤晴彦  語り手役の盲太夫
段田安則 魚売りの七兵衛 / 男(お志保の情夫) / とっかえべい屋 /塙保己市 / 江戸座頭・安房の市 / 首斬役人
梅沢昌代 七兵衛の女房お志保 / 日本橋の橋番
六平直政 仙台座頭・熊の市 / 佐久間検校 / 水戸東照宮の宮侍 /日本橋下の魚売り / 凶状持ちの倉吉
山本龍二 塩釜座頭・琴の市 / 馬具屋/刀研ぎ師・善兵衛 /江戸座頭・伊豆の市 / 初代藪原検校
松田洋治 佐久間検校の結解 / 魚市場の仲買人 /若い座頭 / 江戸座頭・甲斐の市 / 定廻同心・浅野某 /将軍補佐役・松平定信
神保共子 相対死の方われ女 / 強請られる寡婦
景山仁美 魚河岸の売り子 / 強請られる寡婦の娘

↓ 

薮原検校

薮原検校

  • 作者: 井上 ひさし
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1985/05
  • メディア: 文庫

↓地唄箏曲演奏家 菊棚月清検校の語りを聞き書きの形でまとめた一冊

生き生きて地唄旅―大検校が語る伝承の世界

生き生きて地唄旅―大検校が語る伝承の世界

  • 作者: 菊棚 月清
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  • 発売日: 1997/08
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


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麗

Renさん

ご無沙汰してます!
舞台の話題に、反応させて貰います♪(笑)

私も劇中唄われる歌が耳から離れません。
単純なメロディなんだけど、歌詞のゴロが良くて、
なんだか一緒に唄えそうでした。

ストーリー的には重いんですよね。
差別とか卑下とか人間の裏側の心情を露呈してて、
なんだかいやぁ~な気持ちになるものの、
時折笑えるセリフがあったのに救われました。
特に新太くんの表情豊かな「顔芸」には笑わせてもらいましたよ。(笑)

ラストシーン、、、
奇しくも、例の母親殺しの事件とリンクしてしまい、
なんとも言えない気持ちになりました。
by (2007-05-30 00:37) 

Ren

麗さん、こんばんは!
劇中に歌われる歌はどれも歌詞のゴロがよく覚えやすいのに内容はけっこうグロでしたよね~。
ストーリーはかなり重くて、見た後すっきりとはとてもいえない感じでした。
でも古田さんのすごいがんばりを見れてよかったです。
by Ren (2007-05-30 21:58) 

かしまし娘

Ren様、まいど!
悪党でギラギラしたふるチンかと思いきや…。
スロースターターで、しかも、
あの、12Pに及ぶ語りを私の脳みそがキャッチしてくれなくて…(苦笑)
ラストの人形の顔は、たしかにグロでしたね。
東北の雰囲気が出て、”ジトジト~暗~い”というイメージを抱いていたのですが
案外、無臭な感じを受けました。
過去の舞台を観たことが無いのが残念です…。
でも、やっぱり井上ひさしは侮れません…。ムムム。
by かしまし娘 (2007-06-04 14:03) 

nakashi

はじめまして。
トラックバックさせていただきました。

どうぞよろしくおねがいします!
by nakashi (2007-06-08 01:20) 

Ren

かしまし娘 さん、いつもどうもです^^
私も早語りはけっこうキツかったです。
脳ミソフル回転状態で必死に食いつきました(笑)
思ったよりもどろどろしていなかったような気がします。
TBの設定を直しましたのでよかったらまた送ってください。
by Ren (2007-06-10 08:33) 

Ren

nakashi さん、はじめまして^^
TBありがとうございます。また寄ってくださいね。
by Ren (2007-06-10 08:34) 

ぴかちゅう

TB、うまくいってよかったです。
井上ひさし作品は社会的な問題を深く掘り下げた内容を飲み込みやすくしてくれているのが素晴らしいので、上演される舞台は極力観るようになっています。
「薮原検校」は初期の頃の作品ですが、蜷川さんの演出や古田さんをはじめとしたキャスティングの妙でちっとも古臭さを感じませんでした。
しかし、古田さんを深く愛する皆さんは「早物語」も必死で聞いていらして愛情の深さを感じます!私はあの場面は頑張る古田さんが作り出す雰囲気を楽しんでおりました。お市さんに道を踏み外させるに十分な活力あふれる杉の市だと納得。知性に生きるお役の段田さんとの対比もきいてました。
古田さん、これからも蜷川さんの舞台に出てくれると嬉しいです!!
よろしければTB返しお願いしますm(_ _)m
by ぴかちゅう (2007-06-10 22:22) 

Ren

ぴかちゅうさん、TBありがとうございます☆
盲人の差別と生活、社会問題を取り上げた重い内容を思ったよりどろどろとさせずに見事に舞台に乗せていてさすが井上作品+蜷川演出と思いました。。
早物語は雰囲気を楽しむのが正解だったと思います。
大汗をかきながら猛スピードで話す古田さんの
ややこしい台詞を聞き取ろうとするだけで必死でした。
私のぬるい脳が沸騰しそうでした・・・
by Ren (2007-06-16 08:25) 

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