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秀山祭九月大歌舞伎夜の部/歌舞伎座 [歌舞伎]

秀山祭九月大歌舞伎  初代中村吉右衛門生誕百二十年
平成18年9月2日(土)~26日(火)  歌舞伎座
◆ 夜の部
一、 鬼一法眼三略巻  菊畑
ニ、 籠釣瓶花街酔醒
三、鬼揃紅葉狩
*************************************************************
9/9(土) 休日で油断していたため開演ギリギリの到着。東銀座の階段を駆け上がり
息も絶え絶えになりつつ、間に合ってよかった。いつもなら開演前にお土産売り場でぶらぶらと
冷やかしをするのですが、「まもなく開演で~す」の声を聞き、まっすぐ客席へ。


<ネタバレあります>

*鬼一法眼三略巻  菊畑

兵法学者吉岡鬼一法眼の館の庭、浅葱幕が落とされると、見事な菊の花壇の前に
凛々しい繻子奴の智恵内実は鬼三太(幸四郎パパ)相変わらずデカい。他の奴たちに掃除の
仕方が悪いと難癖をつけられ、剣術の心得を教えてやろうと袋だたきに・・なるわけないですね。
逆にやっつけてしまいます。女中たちの後から吉岡鬼一法眼(左團次さん)登場。老け役のシワ
メイクがすごい。衣装も豪華です。幸四郎パパと左團次さんの場はお二人ともになんとなく台詞が
聞き取り難い感じがしてしまいました。花道から!若衆姿の虎蔵実は牛若丸(染五郎さま)登場。
うわぁ~!可愛い!思わず叫びそう「可愛いぃぃ~」とラブラブ光線を出してしまいたくなる色若衆。
このお姿を拝見しただけでもう十分です。お姫さまを置いて先に帰ってきたと叱られている所へ
当の皆鶴姫(芝雀さん)が帰ってきました。芝雀さんはさすが期待を裏切らない可愛らしさです。
これで役者が勢ぞろいかなと思ったのですが忘れてはいけません。歌六さん!笠原湛海(歌六さ
ん)もやってきて、あぁなんてキレイな絵なんでしょう。舞台にキラキラのオーラが輝いていました。

智恵内実は鬼三太 幸四郎
虎蔵実は牛若丸 染五郎
皆鶴姫 芝雀
笠原湛海 歌六
吉岡鬼一法眼 左團次

余談だが菊花壇のセットはもう少し違った雰囲気にしたらいけないのかな。何度も繰り返し
上演されている演目では「こうあるべき」みたいなのが強く、もちろん伝統とそれを踏襲することは
とても大切なことで見慣れた背景でないと楽しめないお客さんもいることだろう。この演目には
この絵という決まりごとも大切にしつつ必要十分条件を備えて且つ新鮮さも求めるのは欲張りか。

*籠釣瓶花街酔醒
序幕
吉原仲之町見染の場
二幕目
立花屋見世先の場
大音寺前浪宅の場
三幕目
兵庫屋二階遣手部屋の場
同 廻し部屋の場
同 八ツ橋部屋縁切りの場
大詰
立花屋二階の場

途中休憩なしの二時間ちょっとツライかも、なんて心配はまったく必要なかった。テンポよく進む
ので場面転換で幕が下りている間も、早く続きが見たい!早く、早く~と言う感じ。。
序幕 の吉原仲之町で、佐野次郎左衛門(吉右衛門さま)と立花屋長兵衛(幸四郎パパ)が
一緒に舞台に立っている姿になんとも感慨深いものを感じた。それにしても町人とは思えない
堂々とした立花屋の主人ぶりだった。花魁道中は華やかで素敵、最初が九重(芝雀さん)で
そして佐野次郎左衛門がメロメロになる八ツ橋(福助さん)。美女の微笑みがオトコの一生を
狂わせる、出会いなんです。でも福助さんの微笑みってコワイ。お口が大きいからかしら?(
ゴメンナサイm(__)m)それで惚れちゃって通いつめて、いよいよ身請けとトントン拍子に進んで
佐野次郎左衛門はそりゃもうお金もバンバン使ったわけですよ。八ツ橋の育ての親?釣鐘権八
(芦燕さん)にも度々無心されたりして、間に立つ立花屋さんもさすがに今度は断りますが
でも10日前にもお金を貸してるのね。それなのに・・・権八が八ツ橋の情夫の繁山栄之丞(梅玉
さん)に告げ口したおかげで話がこじれちゃう。梅玉さんの色男はあまり悪そうな感じがしない。
素人の頃からの付き合いで「起請きしょう」を取り交わした仲。八ツ橋に「一言の相談もなく身請け
されようとはどういうこっちゃ!」と詰め寄ります。ここはもうちょっと嫉妬っぽくてもよかったなぁ。
「俺と別れたくないなら佐野と今日縁切りしてこい!」とも。惚れた弱みの八ツ橋は佐野の座敷で
衆人のもと「いやじゃわいなぁ」、そりゃひどいよ。八ツ橋。どう考えたって失礼でしょ。今までいっぱ
いお金を落としてくれた上得意のお客さんにそこまで恥をかかせるなんて。初めは必死に八ツ橋の
機嫌を取り持とうとする吉右衛門さま、だんだんと小さく小さくなっていく姿。本当にうまいなぁ。
九重(芝雀さん)がしっとりとした優しさを感じさせていい。涙で国へ帰るという吉右衛門さま。
それから4ヶ月、立花屋二階に久しぶりの佐野次郎左衛門。女将、太鼓持ち、芸者衆も喜ぶ。
八ツ橋を呼んで「あのことは忘れましょう、今日を初回に・・」と優しく語り、花魁と二人で話をしたい
のでと皆を下がらせる。それは、恨みを晴らすためだった。優しく八ツ橋に酒を勧める吉右衛門さま
なかなか飲まない八ツ橋のその腕を掴み「この世の名残の一杯・・」鬼気迫る。全身から炎が登る
ような怒り、悔しさ、そして一刀のもと八ツ橋を。ゆっくりと海老反って倒れる福助さん。灯りを持って
きた女将も切り捨て、妖刀を見つめる佐野。迫力のラストシーン。圧巻でした。

佐野次郎左衛門 吉右衛門
八ツ橋 福助
立花屋女房おきつ 東蔵
下男治六 歌昇
七越 高麗蔵
初菊 宗之助
お針女おなつ 歌江
遣手お辰 鐵之助
絹商人丈助 桂三
絹商人舟兵衛 由次郎
釣鐘権八 芦燕
九重 芝雀
繁山栄之丞 梅玉
立花屋長兵衛 幸四郎

*鬼揃紅葉狩
舞踏劇。大きな富士山三越の緞帳が上がると松羽目に演目の紅葉が栄える能写しの舞台。
正面に囃子方、上手と下手に山台がある。
平維茂(信二郎さん)はすっきりした男ぶり、さっぱり系の美男で好きです。従者雪郎太(松江さん)
同 月郎吾(種太郎くん)もすっきりした姿でいいです。花道から登場の更級姫(染五郎さま)は、
美しい!え?っと思うくらいの清潔な美しさ。私は染五郎さんはどうしても立役のイメージだったの
ですが、周囲のおばさま方からも「きれいねェ」の声があがっていました。
間狂言では廣太郎、廣松、玉太郎、隼人が男山八幡の末社の神に扮する。小さい子がカワイイ。
後見さんたちは大変そうだったけれど、一生懸命お役を勤めるる姿が微笑ましかった。

更科の前実は戸隠山の鬼女 染五郎
従者雪郎太 松江
同 月郎吾 種太郎
男山八幡の末社 廣太郎
同 廣松
同 隼人
同 玉太郎
侍女もみじ 吉之助
侍女かつら 宗之助
侍女ぬるで 吉弥
侍女かえで 高麗蔵
平維茂 信二郎


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コメント 10

いいですねぇ、夜の部。
あばたの吉右衛門さま、観たかったわいなぁ。
紅葉狩りも、この間「よこすか能」で観たばかりなので、歌舞伎版も
観てみたかったです。染さま、似合いそうですものね。
by (2006-09-11 19:44) 

愛染かつら

こんばんは。
私も菊畑を観ていて、「この菊花壇もっと美しくなるんじゃないの?!」と思ってました~。
菊畑なんてタイトル付けているんだしね、ちょっとあれじゃあ物足りないですよねぇ(笑)。

今月は昼夜共に違った趣で、ものすごーく濃い舞台が楽しめますね!
by 愛染かつら (2006-09-12 02:40) 

Ren

ERUNさん、nice!ありがとうございます☆
吉右衛門さますごい迫力でしたよぉ。あばたにしてもブ男に見えないの(笑
紅葉狩りは、テンポもよく登場人物がみな美しくて眠くならない能写し。
鬼がいっぱいになるのも楽しかったです。
by Ren (2006-09-12 06:53) 

Ren

愛染かつら さん、nice!ありがとうございます☆
若衆姿の染五郎さんも可愛かったです!久しぶりの女形も美しかったし・・
そして「菊畑」ってタイトルなのに、お花はこれだけ?(笑)ちょっと寂しくて
役者さんが豪華なので、背景はどうでもいいんかい!?って思いました。
by Ren (2006-09-12 06:59) 

mami

Renさん、こんばんは。
あばた面でも何でも吉右衛門様はやっぱり素敵ですよねえ。
夜の部はどの演目も(筋はともかく)華やかで見映えが良いものが並びましたね。(確かにあの菊畑はショボイけど(笑))
歌舞伎らしさを堪能できました。
TBさせていただきます。
by mami (2006-09-28 00:48) 

かしまし娘

Ren様、まいど!
>福助さんの微笑みってコワイ。
それでイイんです(笑)あの悪魔の微笑みに惚れてるのは、次郎左衛門だけじゃなっす。私も~!
やっと書けたのでTBさせて頂きますです。
by かしまし娘 (2006-10-10 12:51) 

Ren

mamiさん、こちらもお返事遅くなってすみませんでした。
菊畑、あまりにショボかったのでつい書いてしまいました。
せっかく華やかなタイトルつけたんだから、もう少しなんとか、要望です。
by Ren (2006-10-13 07:48) 

Ren

かしまし娘 さん、TB&コメントありがとうございます☆
>悪魔の微笑み  なるほど~、そういうことなんですね。
吉右衛門さまの次郎左衛門にはもう大満足。播磨屋最高です!
by Ren (2006-10-13 07:50) 

ぴかちゅう

私も福助さんの「八ツ橋の笑み」がダメだったです。お歯黒の口はあまり大きく開けないで欲しい~。歌右衛門さんは晩年のお写真も苦手だし、ポスト歌右衛門世代の私にはやっぱり共感できない美しさなのかもしれません。まあ、そんなこと言っててある日、これがいいんだ~と目覚めないとも限りませんが(^^ゞ
配役が変わると物語の解釈まで変わってしまうんだって今回思い知らされました。播磨屋の次郎左衛門よかった~!吉右衛門・雀右衛門のコンビ、映像でもいいから一度観てみたいなと思いました。
by ぴかちゅう (2006-10-13 21:49) 

Ren

ぴかちゅう さん、こちらもコメント&TBありがとうございます☆
「古典歌舞伎の美しさ」より自分の基準を重視しちゃう見方なので
私も晩年の歌右衛門さんのお写真は・・やっぱり苦手です。
私の印象では福助さんはいい時と今日は・・と思う日の落差が激しいです。
吉右衛門さんの次郎左衛門、すごかったですね!よかったぁ~!
by Ren (2006-10-14 12:16) 

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